過去の記事でも書きましたが、うちの息子は本当によく手が出る子でした。
息子は、自閉症の症状がわりと強い子でしたが、発達検査の認知の数字がそこそこあったため、一般園に入園するしかありませんでした。
幼稚園の年中がピークでしたが、在園した3年間、とにかく、お友達に近づけると危ない子で、かじる、叩く、蹴る、物を投げる。
大人が腕で囲って歩いていたくらいです。
感情の起伏も激しい子でした。
他害って本当に困ります。
人に迷惑をかけるので、親にとっては最も苦しいことなのではないかと思います。
園時代は、毎朝『今日は誰も傷つけませんように🙏』と祈りながら送り出していました。
傷つけた相手の親御さんには、直接謝るため出向いたこともありますし、参観会や運動会等のイベントではお詫び行脚でした。
そんな息子は、小学生になり、他害がピタリと無くなりました。
そして、”平和主義で穏やかな子”と言われるくらいになりました。
あんなに困っていて、私も悩んで悩んで悩み抜いた息子の他害行為。
それが、小学校に入学して2ヶ月も経たないうちに、ほとんど手が出なくなるなんて。
望んでいたけれども、幼稚園時代は想像できなかったです。
今回は、どうして息子の他害は止まったのだろうか。
また、息子の他害行為を無くすためにどんな努力をしてきたのか。
私の体験を書きたいと思います。
目次
他害の原因は何なのか
言葉の成長が遅かった
言葉の成長が遅い息子。
幼稚園入園当時は、いくつかの単語を発する程度でした。
嫌な気持ちを伝える手段が叩くこと。
息子には、それしかなかったのだと思います。
幼い息子が自分で思いついた、自分の嫌な気持ちを表現する精一杯の行動が叩くこと。
年長になっても、息子の言葉は決まったパターンの2語文、3語文がやっとで、自分の気持ちを言葉で表現することはなかなか難しかったです。
「イヤ」くらいは言えるようになっていましたが。
言葉で言うより、手が出るほうが早い。
そんな状態でした。
感覚過敏がひどかった
息子は、音の感覚過敏があると言われています。
特に、子供の泣き声や女の子の甲高い声は嫌なようでした。
幼稚園の環境は、息子にとっては過酷そのものだったのかもしれません。
また、接触についての過敏もあるようでした。
突然ぶつかってくる子供に対しとても不快(怖い?)と思うようで、その子を叩いたり蹴ったりかじったりしました。
また、買い物途中にすれ違うだけのお客さんに叩きそうになったり、レジ打ちの店員さんをかじったりしていました。
これは、人よりもパーソナルスペースが広いのではないか、と推測できました。
自分の領域に、自分の許容していない人が入ってくるのが嫌なのは、みんなそうだと思いますが、それが普通の人よりも広いのかな?と予想できました。
でも、幼稚園で生活をしていると、どうしても集団行動で人との距離が近くなります。
なので、家にいるよりも他害行為が目立ちました。
もちろん、人に危害を加えることは止めなければなりません。
でも、自分の思い通りに相手に叩けなかった、気持ちを発散できなかったイライラは、息子の中では相当なものだったのか。
制止すると大声を出す、泣く、暴れるなどのパニックを起こします。
時に、自分の頭を床や壁に打つ自傷行為もありました。
そして、息子は性格がねちっこかった😱
不快な気持ちを覚えていて、後で叩ける時に叩きに行くことがありました。
ひどい時は、数日前のでき事を復讐しに行っていました。
他害を無くすための環境作り
不快の原因を減らすためのイヤーマフ
感覚過敏で、音が嫌で叩きに行くのであれば、その音をなんとかしなければ。
かと言って、幼稚園の子どもたちに泣くな、騒ぐなと言うのは無理で、過敏のある息子が対処するしかありません。
そこで、”イヤーマフ”を利用しました。
イヤーマフをすることで、音がこもったように聞こえるようになり、周りの雑音の音量が下げられます。
最初は、マフを付けること自体嫌がりましたが、そのうち息子自身が”楽”を感じることができたのか、自分で進んでつけるようになりました。
イヤーマフについては、こちらの記事で書いています👇
投薬で精神の安定を試みる
投薬・・・と聞くと、どうしても副作用とかを心配して敬遠される方もおられると思います。
ましてや、自閉症の子が受診している精神科で処方される薬は、精神安定剤的な名目の物ですから。
長く継続して飲むことにもなります。
私も、最初の頃は、薬には頼りたくないなと思っていました。
でも、臨床心理士から、薬が合う子にはビタッとはまって顔つきまで変わるというお話を伺って、試してみる気になりました。
使用の目的は、感覚過敏へのアプローチと、睡眠を取りやすくするためです。
幼稚園当時の息子は、睡眠がまだ安定せず、朝方早く3時、4時に目覚めることもしばしばありました。
その影響で、日中の機嫌が悪くなることも度々あったので、薬がもたらす眠気を逆に利用した形になります。
最初、”エビリファイ”という薬を試して、効果をさほど感じませんでした。
漢方も併用しましたが、これも効果はほとんど感じることができませんでした。
”リスパダール”に変更して、ようやく少し効果を感じるような・・・
そんな微々たる変化でしたが、飲んでいないより飲んでいた方が機嫌が良いことが多かったため、継続して飲むようになりました。
お友達と距離を離す
幼稚園時代、お友達と同じテーブルに座ると、隣の子との距離が近くなるため、よくお友達にかじったり叩いたりで困らせました。
お友達が近くにいる状態が常に危険で、先生も気をもんだと思います。
なにせ手が出るスピードが速いので。
副担任の先生が息子についてくれていましたが、ずっと息子だけを見ているわけにもいきません。
不快に感じた時、自分で場所を変えるなど、子ども自身が予防線を張れると良いのですが。(小学生になった今はできるようになりました。)
それができないので、物理的に離すしかない。
そうすれば、接触の回数を減らせ、叩きに行きそうな時も距離が遠ければ対処できる機会が増えるだろうと思いました。
そこで、自分でパーテーションと机を買い、園に持ち込んで、教室内に息子のスペースを作ってもらいました。
あえてお友達との距離が取れるようにした配慮です。
パーテーションについても、こちら👇で書いています。
園で集団生活を送る上で、お友達とあえて離すことは良いことなのか、園の先生も迷われたようですが、私が掲げた息子の目標は、お友達と同じ空間に居られること。
適切な距離を保ちながら、近くでお友達の存在を感じることができるだけで十分でした。
幼稚園なのだから、集団で生活をしているのだから、みんなと一緒に行動し、集団で遊ぶことをたくさん経験した方が良い・・・という考えが一般的だと思いますが、息子はそこまでには至らなかったです。
もちろん、みんなと一緒に遊ぶことはありました。
自由遊び等でお友達の中に入って遊ぶ際は、先生に横に付いてもらい、見守りのある状態で参加させてもらいました。
園庭等、広い空間では子どもたちも密集しにくく、息子も遊びやすいようでした。
その他、園にいる多くの時間、息子はパーテーション内の空間で1人で遊ぶことが多かった、というか、そうするように仕向けたのですが、その方が精神的に安定していて、園での集団生活を送りやすくなったと思います。
叩く経験そのものを無くしていくことが大切
発達の専門病院では、医師、臨床心理士ともにこうアドバイスをしてくれました。
他害を無くすには、叩く経験そのものを無くしていくことが大切
叩く経験を減らしていくと、他害は無くなる。
そう言われても、無くせないから困っているのですが・・・😥
他害を無くすには、他害を未然に防ぐことをしなくてはいけません。
環境を整えて、叩く量を少しは減らすことはできていたかもしれませんが、0にまで持っていくことには到底及びませんでした。
理論上の考えはわかっていても、生活している上では難しかったです。
一般園に対して、先生が子どもにマンツーマンで付きっ切りは無理です。
私だって、公園などで一緒にいても、息子の他害をほぼ防げるかと言われれば難しいし。
なので、冒頭にも書きましたが、腕で息子を囲って歩いていました。
あるいは、人にぶつからないよう、抱っこやおんぶをして外出していました。
本人が歩く際は、両手を大人が握りがっちりガード。
そして、買い物等人ごみには極力連れて行かない。
広い遊具のない公園とか、自然の多い場所に連れて行っていました。
それくらいしか、対応できなかったです。
専門家に相談しても、回答はいつも同じような感じで、他に良い策もなく、途方に暮れていたというのが実際のところです。
支援学校の先生が行ってくれた対応
適切な声掛け
小学校に入学当初、息子はまだ手がたくさん出る状態でした。
支援学校では、小1の時は7人の子どもを3人の先生が見てくれました。
そして、息子が友達を叩いた時、叩こうとした後すぐに、
という具合に、息子の不快な気持ちを言葉で伝える方法に変えていく努力をしてくれました。
叩きたかったのに叩けなかった、イライラした息子の気持ちを静めるため、息子と一緒に10数えて、気持ちを引きずらないで次の行動に切り替えできるように仕向けてくれました。
プロだからできる予測
支援学校の先生って、本当にプロ。
それを改めて実感したのは、年長の秋に、支援学校へ体験入学に行った時のこと。
子ども1人に先生1人が付いて対応してくれたのですが・・・
息子と学校の先生は、当然初対面です。
なのに、手が出るタイミングをバッチリ把握していて。
何回か、息子が”叩くぞ”というタイミングがあったのですが、すぐに察知してくれて事前に止めてくれました。
しかも、2人がかりで。
状況や子どもの顔付をよく見てくれているからできる俊敏さでした。
その先生の行動の速さは圧巻。さすがプロ!
その後、気持ちを切り替えるために、違うことにサッと誘導するのもお見事👏
私も障がい児の施設で少し働いていたことがあるのでわかるのですが、常に気を張ってないと
あそこまで素早く対応するのは難しいです。
遊び場も、ちょっと様子を見るだけで”この子とこの子は少し離した方が良い”と判断が付いたようで、素早く良い環境作りをしてくださいました。
支援学校に正式に入学した後は、教師の人数の多さもあって、息子の他害に対して即座に対応できる環境にありました。
毎回毎回、丁寧に言葉掛けをしてくれて、まだ言葉をうまく発することができなかった息子と一緒に、「イヤだった。」「痛かった。」と相手に伝えに行ってくれたり、先生が代弁してくれたり。
そうした積み重ねで、小学校入学後、2ヶ月も経たないうちに他害が消失していきました。
現在の息子
息子は、今でも接触などを嫌います。
でも、自分の気持ちを少しずつ言えるようになりました。
「ぶつかって、びっくりしたよ‼」と先生の口調にそっくりな調子で話すこともあり、今までの声掛けが生きているのを感じます。
実感しているのは、自分の気持ちを言葉にすることで、相手に想いが伝わる経験をしたんだなということです。
先生が息子と一緒に相手に言葉を伝えに行ってくれたことで、こういう時にどう言えば良いのか、息子自身習得していって、言葉が相手に伝わり、気持ちが納得する経験を積んだことが大きいと思います。
今までも、園で先生がとても丁寧に対応してくれていたので、支援学校の先生と同じような声掛けをしてくださっていました。
違いは、毎回事が起こる直前や直後に声掛けができるというタイミングや、しつこいくらいの回数なのかな?と思います。
また、息子自身の逃げ方が上手になりました。
同じ学年に手が出やすい子がいるので、一定の距離を置いたり、その場を離れたり、学年で行動する際に危険を感じると、混雑を避けたり、先生の近くをキープして行動しています。
近くにいる大人にヘルプを出せることも大切なことで、ここもできるように指導していただきました。
息子なりのリスク回避がしっかりできているのを感じます。
音に関しても、支援学校はだいぶにぎやかいですが、イヤーマフなしで生活できています。
時折奇声が聞こえる際は、自分の耳を塞いだり、「シー」とジェスチャーをしたりして、うるさいアピールをしています。
でも、手が出ることはありません。
最後に
ある専門家の先生に他害について相談した時に、こうアドバイスを受けました。
他害には2つのパターンがあって、1つは言葉が遅く、「イヤ」を言う代わりに叩く。
もう1つは、自分のストレス発散のために叩く。
そして、息子は後者なのではないか・・・と言われました。
後者である場合は、なかなか治らないとも言われました。
サンドバッグ的な物(クッションやスクイーズなど)を用意して、そこに向けてストレスを発散させる練習をしたらどうかとか、そんな話も出ました。
私は、息子の言葉が成長して、自分の気持ちを言い表せるようになれば、他害は無くなると思っていたので、この専門家の先生の意見には動揺しました。
病院の臨床心理士さんにこのことを伝えると、息子がストレス発散タイプの他害という点において「何を根拠にそんなことを言ったのでしょうか⁉」と憤っていましたけれど。
専門の先生でも、色んな意見、考えがあり、アドバイスやその子に対する見解が異なるんだなと改めて思いました。
専門家の意見に右往左往し、どうすればよいのか悩んだ時期が、今ではもう懐かしく感じます。
今思うことは、確かに言葉は重要です。
言葉の発達によって他害は減っていくのかなと思います。
でも、言葉が出せるだけでなく、相手に伝える力や、判断力、ある程度我慢できる力、気持ちを切り替える力なども必要なのかなと感じています。
と同時に、できるだけ小さいうちにプロから指導を受けることの重要さを感じています。
先生の対応を家でも取り入れ、情報や対応を共有したことで、2ヶ月という短期間で効果を出せたのだと思います。
もちろん、それまで園でも適切な対応をしてくださっていたので、そういう積み重ねもあると思いますが。
環境と、専門家による指導の影響は大きいと思います。
息子を支援学級に入れていたら、おそらく今でも私は他害に悩んでいたと思います。
それどころか、精神的に安定せず、不登校になっていたかもしれません。
2歳から週1回ペースで療育を受けてきた息子ですが、支援学校の環境は毎日が療育です。
それまで受けてきた療育とは別格と感じる程、息子への効果はてきめんで、日々成長を感じます。
なんだか支援学校の賛美になってしまいました。
今日はこのあたりで終わりにしたいと思います。