先日、初めて性教育についての講演を聴いてきました。
息子は現在小学2年生。
これから思春期に向けて色々難しい時期になってくるため、早めに聴いておきたいと思い受講しました。
避けては通れない問題でしょうし。
生々しい課題なだけに、少々構えて行ったのですが、講師の先生が大変おもしろい方で、不快な思いを一切せずに聴くことができました。
特に、発達障害の子でも恋愛・結婚を視野に入れて良いというお話に希望を抱きました。
今回は、私にとっての講座の備忘録ですが、一端でもみなさんにお分けできれば良いなと思って書こうと思います。
目次
性器いじり・自慰行為への対応
原因の多くは”痒い”から
息子は、すでに幼稚園の時から、ズボンの中に手を入れたり、ソファの肘掛部分にまたがり股をこする等の行為がありました。
周りのお母さん方に聞くと、布団の上にうつ伏せになって股をこすっている子もいますし、全くそういうことが無い子もいます。
男の子は、幼稚園や小学校低学年など、比較的低年齢からそういう行動が見られることが多い印象です。
私も、息子の行動についてはずっと気になっていて、病院の心理士等に相談しましたが、注意をするのではなく、うまく他のことに気をそらすことを勧められました。
そうは言っても、暇な時間があるとすぐにまた始めてしまい、いたちごっこの末疲れて、今は放置状態でした。
今回の講座では、どうして性器を触るのか?について、最初に先生に教えていただいたのですが、その1番の理由は、性器の痒みであることが圧倒的に多いそうです。
どうして痒いのか・・・それは、上手に洗えていないから。
痒みがきっかけで性器を触り、それが癖になったり、延長として自慰行為に繋がることもあるそうです。
男女ともに性器をちゃんと洗えるように指導する
まずは、性器を上手に洗えるように、親がしっかり指導してあげなければいけないと教わりました。
男の子に対して、異性である母親が教えてあげられるのは、せいぜい小学2、3年生まで。
それを過ぎたら、その役目は父親に、とのことでした。
実際に子どもの性器を手に取って洗ってあげるというのは、けっこう難しいです。
息子はすごく嫌がります。
そういう時は、父親が洗っているところを見せたり、着ている長袖の衣類を利用して(それを性器に見立てて)説明してあげるとわかりやすいそうです。
女の子にも同じようなことが言えて、性器をうまく洗えていなくて、中には汚れで白くなっている子もいるそうです。
産婦人科の先生が、「こんなに汚れていれば病気にもなるわ。」というくらい、小さな女の子の陰部が汚れているケースも結構あるそうですよ。
膣部分は自分でキレイにする力があるので、それより前の部分をよく洗うように教えてあげる必要があるとのことでした。
しても良い場所・時間
自慰行為は、しても良い。
性器に触ることも、清潔であるならば良い。
女の子も男の子も。
先生はきっぱりおっしゃいました。
ただし、して良い場所や時間を決めることが大切だそうです。
- 人の前では性器を出さない。
- 自分の部屋のベッドの上だけ。
などのルールを作ること。
【事例】
毎晩兄弟で一緒にお風呂に入っている。
お兄ちゃんの方がお風呂の中で決まって性器いじりをする。→弟がそれをとても嫌がる。
『取った対策』
弟を先にお風呂から出して、10分間だけお風呂場を締め切りお兄ちゃん1人、本人の好きなようにして良い時間にしてあげた。
『結果』
お兄ちゃん1人の時間であっても性器いじりがなくなった。
お兄ちゃんが性器いじりをする原因は何だったのでしょうかね?
原因は思わぬところにあるかもしれません。
先生は、原因の決めつけだけはやめることが大切だとおっしゃいました。
もう1つ別件ですが、事例をあげると・・・
【事例】
ある男の子が、特定の女の子の胸をじっと見ることが続いた。
周りの大人は、その男の子に対して性への関心が始まったようだと分析していた。
『本当の理由』
ところが、男の子が女の子の胸部分を見つめる本当の理由は、女の子の体操服に付いている名札が原因だとわかりました。
その女の子の名前に、男の子の好きな文字が入っていて、彼はそれを見ていただけだったのです。
理由、原因、それは、性とは全く関係のないことにあるのかもしれません。
原因がわかれば適切な対策が取れますよね。
代替活動を用意する
冒頭にも少し書きましたが、別の活動を用意する、気をそらすことも必要かと思います。
息子の場合もそうですが、暇な時間に何をして良いかわからず、時間つぶしが体に向かってしまうこともあると思います。
そういう時間に、何か打ち込めることを作ると良いなとは思います。
ただ、私も苦戦をしていますが、なかなか難しいです。
余暇の充実や好きなこと探しにもつながることですが、1人の時間を楽しく過ごせるようになるように、徐々に練習していこうと思います。
また、性器いじりなどの問題行動をしていない時は、とにかくほめる。
これも大切だそうです。
胸を触る等の身体接触
これならO.K.がいくつ言えるか
息子も最近よくあるのですが、私の胸を触りに来ます。
背が高くなり、息子の顔がちょうど私の胸あたりにくるようになったので、顔をする寄せてきます。
今は可愛いで済んでいますが、もう少し大きくなってこれでは困ります。
どうして、子どもが胸に触るのか?
その理由も、実は性的な欲求で行っているわけではない可能性が高いそうです。
多くの子どもは、親に対して接近を求めている。
ただそれだけなのかもしれません。
気持ちが良いからプニプニしたい。
そういう感覚を求めているだけかもしれません。
だから、代替え案を用意します。
- 胸は×でも肩なら〇だよ。
- 頬っぺをプニプニなら〇だよ。
- ハイタッチなら〇だよ。
そういう案をいくつ出せるか、いくつ用意してあげられるかが大切だそうです。
一人称で気持ちを伝える
子どもが胸を触ってきた。
嫌なことをしてきた時に、だた「ダメ」と伝えるだけではなく、一人称を入れて気持ちを伝えると良いそうです。
- 「私は、これやめて欲しいな。」
- 「お母さんは、○○やめてくれてうれしいよ。」
こうすることで、相手に気持ちが伝わりやすくなるとか。
これは、私、別で教わって意識的に実践しています。
嫌な時、悲しい時、うれしい時、自閉症の子は相手の気持ちを理解することが難しい時があるので、口にしてあげることで、あと表情も一緒に付けてあげると伝わることが多くなるような気がします。
性への関心、欲のコントロール
がまんする力を育てる
ここで、先生は、ある問いを私たちに投げかけました。
隣の席のお母さん方と少し相談して意見を出し合いました。
大多数の方が
- じっと見つめる
- 近くの席に移動する
- 声をかける
などの積極的な展開を口にしていました。
先生は、他にあるでしょ?と。
あるお母さんが、「別の車両に移る」と答えた時、先生はニッコリうなずきました。
その素敵な人が見えない場所に自分が移動する。
または、その電車から降りることで、自分の欲を打ち消す方法です。
この力がとても大切なのだそうです。
発達障害の子は、そういう欲のコントロールが苦手であったり、人との距離感がうまく図れなかったりします。
先生は、こう例えていました。
【カエル・ネコ・人間】と【好き・恋・愛】について。
カエルは、”好き”となったら自分の欲を果たすための行動をする。
”好き”にはまだ心がない。(”好”という漢字には心がない。)
ネコは、好きな相手を追いかける”恋”
”恋”には心があるが、下心。(”恋”という漢字には下に心がある。)
人間は”愛”の生き物。
”愛”はまごころ。(”愛”という漢字には心が真ん中にある。)
動物のたとえのところは、メモをしていないのでうろ覚えなのですが😓
好きと恋と愛の違いについては、なるほどなぁ~と感心してしまいました。
10歳までの子育ては性のコントロールの基礎
本来の性教育とは、子どもの時期の生活リズムにあるそうです。
普段の生活の中で、食事・排泄・睡眠・清潔・運動を意識することで、頭で覚えるのではなく、体で人間関係の作り方を学んでいくのだとか。
例えば、食事。
空腹になっても、食事の時間まで我慢する。
我慢を乗り越えて食べた食事はおいしい。
満足感を味わう。
この一連の流れで、メリハリやリズム、我慢を学ぶそうです。
好き・嫌いは、調理方法の工夫や食材の代替えを経験し、人との折り合いを学び調和ができる子になるそうです。
排泄ではふんぎりを学び、睡眠では安心と安定を得ます。
ちなみに、睡眠は、睡眠時間でなく、朝起きた時の「おなかが空いた」という感覚が大事だそうです。
清潔では、快・不快、ストレスからの解放を得ます。
運動は、色々な効果がありますが、1番わかりやすいのが感情抑制ですかね。キレない子になるとか。
自己コントロールができる子には、体を使った遊びがとても大切で、中でも球技が良いそうですが、その子に合った運動であれば良いとのことです。
あまりに日常的なことで、聴いている時はピンときませんでしたが、安定した生活、日々の積み重ねが、自己をコントロールする上で大事なことなのだなぁと勉強になりました。
思春期の問題行動は自立へのあがき
先生は、10歳までにやれなかったことの補完や修正の時期として、思春期があるとおっしゃっておりました。
この時期に子どもが悩むこと、性欲を体験することは、親離れのエネルギーとなるそうです。
加えて、「性」「薬」「賭け事」などは、禁止が指導にならないため、思春期を迎えた子どもに怒る等の指導はしないで・・・とおっしゃっておりました。
私は、息子に思春期が来るのが怖いです。
発達に課題がある子は、思春期に荒れやすいと聞いていたからです。
この時期には精神的に不安定になりやすく、情緒をコントロールする薬が必要になったり、子どもが暴れて親が骨折するなんて話を聞いたことがあるので。
でも、先生のお話を聴いて、10歳までの教育で土台ができていれば、必要以上に思春期を恐れなくても良いのかな?と少し安心しました。
恋愛・結婚を視野に入れた支援を
あなたは、発達障害がある子どもが、将来結婚できると思いますか?
私は9割方、息子に対して結婚は諦めていました。
今は結婚しない人も多いし、できなくても生きていけるのではと。
でも先生は、それを視野に入れて良い、とおっしゃいました。
外国の事例をあげていただきましたが、知的障がい者が、同じ知的障がい者を支援する組織があったりして、そこでは自分たちで考え、自分たちで決めて、人生を豊かに生きていくための行動がとられているそうです。
具体的には、知的障がい者同志が結婚をし、そのカップルが知的障がいのある子どもを養子に迎える。
なぜ、この子を養子に?との問いに、本人たちは、「この子のことを1番理解してあげられるのは、おそらく私たちだから・・・」と答えたそうです。
そのお話を聴いて、なんかすごいなぁと心がざわつきました。
そういう手があるんだなと。
そして、心が温まるというか、じんわり来てしまいました。
日本ではそこまではなかなか難しいことかもしれないですが、いずれはそういう未来も来るかもしれない・・・と希望を覚えました。
そして、自閉症の息子にも、結婚を望んで良いのだなと、勇気を持つことができました。
先日、ちょうどタイミングよく、NHKで『ドキュランドへようこそ 恋をしようよ!~発達障害の若者たち・デート大作戦~』という番組を放送していたので見ました。
たしかイギリスの番組でしたが、支援者が間に入り、発達障害当事者同士の恋愛や結婚を支援している取り組みを紹介する番組でした。
番組内では、アスペルガーや自閉症、学習障がいの方がパートナーを探し、デートして、お付き合いが始まるまでの様子を追っていましたが、不器用ながらも努力する若者たちの姿がすごく素敵で、興味深い番組でした。
外国の方って、本当に自分の気持ちをよく口にしたり、相手をほめるのが自然だったり、リアクション、表現がうまいなぁと思いましたが、パートナーとのデートで湧き上がる気持ちとか、うれしさがにじみ出る感じが伝わってきて、発達障害があっても、根本的な人間の部分は何も変わらないし、恋をしたい、パートナーを得たいと思う気持ちがあることを、思い知らされた内容でした。
支援者や親の協力は必要なのかもしれません。
また、当事者同士の方がうまくいくかもしれませんが、将来一緒に過ごせる人がいるということは、親にとってもなんとも心強い未来なのではないでしょうか。
私も例外なくですが、発達障害の子を持つ親は、親亡き後の心配が強い人が多いですからね。
その心配を安心に変えられる、希望を持てることがうれしかったです。
月経への対応
忘れてはいけないのが、女の子の月経対策ですね。
うちは息子しかいないので、この問題は心配いらないのですが、男の子でも、女性のホルモンバランスの影響を知ることは良いことかもしれません。
機嫌が悪い時があるのかとか、体調が悪い時があるとか、そういう時に思いやれるように。
昔、支援学校で女の子が教室内でズボンを脱いでしまう話を聞いたことがあります。
脱いでしまう理由は、生理中の不快感から。
恥とか、そういうことが芽生える前に、体の不快が勝ってしまって行動してしまうのでしょうかね。
腹痛やホルモンバランスの関係で機嫌も悪くなりやすく、それが月に1度訪れるとなると、生理中のケアも含め、本人にとっては結構な負担になるのではないでしょうか。
講演の中で先生は、自分に合った道具を見つける提案をしてくださいました。
例えばお気に入りのナプキン。
かわいい柄、肌に当たる質感、物によって違いますよね。
ちなみに、女子高生に人気があるのが、こちら👇のナプキンだそうです。
ネコがかわいい🤗
他にも、”ピル”を使う手を教えていただきました。
子どもにピル⁉
すごく意外な提案だったのですが、ピルには生理を3ヶ月に1度にするもの、1年に1度にするものなど様々あるそうなのです。
薬をやめれば、また毎月、ちゃんと生理が来るようになります。
私は使用経験がないので、なんか怖いイメージがありましたが、そう怖がることもないそうです。
通常は保険適応外のようでお金がかかりますが、お医者様に相談して月経困難症などの診断が付けば保険の適応になるそうです。
どうしても生理のケアが難しい子とか、気分の波が激しくなってしまう子には良い手なのかもしれません。
中・高校生の悩みは色々
質問あれこれ
講師の先生は、中・高校生に向けても性教育をしているそうで、質問をメールなどでも受け付けているそうです。
その中で多い悩みが、男の子の場合、性器のサイズだそうですよ。
修学旅行等で大きさをからかわれ、ずっと気にしてしまう子が多いそうです。
特に、発達障害の子は言葉を真に受けてしまうので深刻に悩むケースもあるとか。
- 「どのくらいの長さが必要ですか?」
- 「どこから測れば良いのですか?」
- 「色は黒い方が良いのですか?」
- 「包茎で悩んでいる」
そんな内容だそうです。
ちなみに答えですが、生殖機能的には性器は5cmあれば良いと言われているそうですね。
1円玉が3枚あれば十分と答えているようです。
そう言われると、安心できそうですね。
また、自慰行為への質問も多いとかで、
- 「どう行えばよいのですか?」
- 「どこを触れば良いのですか?」
といった内容だそうです。
そういう質問に対しては、感覚は人それぞれなので答えられないけれど、お風呂の中で、体が清潔な時に自分で色々触ってみたら良いですよ、と返答するそうです。
下着の工夫
ある女性の事例です。
【事例】
グループホームに入所している彼女は、仕事から帰ってくると下半身だけ全て脱いでしまう。それを何とかやめさせたい。
『原因』
彼女の場合、脱いでしまう原因は下着でした。
彼女の下着は毎回、お母さんが選んで買ってくるそうなのですが、それがベージュとか地味な色だったそうです。
彼女は、周りの子がかわいい下着をつけているのに、自分だけおばさんが履くような下着を付けたくなかったようなのです。
また、サイズもきつく、本人に合っていなかったので履きたくなかったというのが理由でした。
今度は男の子の場合です。
性的に興奮していない、何でもない時に下半身が反応してしまう子がいるそうです。
私は男ではないのでわかりませんが、歩いて衣服が擦れるだけでもそういった反応が起こる人もいて、それは、見た目にもよくないので対策をした方が良いとのこと。
ブリーフ等で抑えが効くような下着があるそうです。
下着1つでも、奥が深いんですね。
お話が苦手、気持ちがわかりにくい子でも意思はあるのだから、親もそういう点に気を配って、本人に合った支援をしてあげないといけないなぁと思いました。
最後に
障がい者にだって性欲はある。
私が最初にそのことを意識したのは、中学生の時です。
買い物途中に知的障がいのある男性が私の後を追いかけてきて、怖い想いをしたことがあります。
その時は、母親がお店の警備員を呼びました。
次の機会は、大学生の時。
当時『セックスボランティア』という本が出て、大学の教授からこのことについてどう考えるか投げかけられました。
題名からして、私は本屋で購入したり、図書館で借りる勇気が持てなかったのですが、立ち読みくらいはした覚えがあります。
少なからず、そういった事実に衝撃は受けました。
またまた、大学生の時の話。
実習体験を話している際に、同級生たちが実習先で体験した生々しい話を聞きました。
ある男子学生は、老人施設で夜の見回りをしていたところ、認知症の女性から誘いを受け、手を取り誘導までされました。
入所している女性の気分はすっかり若い女性に戻っていたそうです。
また、ある女子学生は、お風呂支援の際に体を洗っている男性入所者の下半身が反応してしまい困ってしまいました。
障がい者の入所施設では、若い実習生は格好のターゲットになりやすいです。
出会いのない彼らは、実習生の体を触ってくるし、連絡先を聞いてくるし、挙句の果てには夜勤の仮眠中に部屋に入ってきたり、宿泊先を狙ってきたり。
そういった話を聞いていたので、学生時代は、障がい者の性の問題は嫌悪しかなかったと言っても過言ではありません。
でも、実際自分の息子が障がいを持って生まれてきたとき。
もちろん問題行動は起こして欲しくはないですが、将来、どうやって欲求をコントロールするのだろうか、かわいそうな気にもなってきます。
昔、近所の知的障がいを持つお兄さんが、親からお金をもらって風俗店通いをしている、という話を聞いていたので、息子からもそんな要求を受けるのだろうか。
頭の痛いというか、向き合いたくない問題ではありました。
今回の講演は、そういった心配を感じさせない、明るく楽しい性教育でした。
今後どこまで悩ましい問題になるかはわかりませんが、人に迷惑をかけることのないように、我慢する力、自分の欲求をコントロールする力を、小さい時から養っていかなければと思った次第です。